霧の夜を眺めている
旅先の坂を下った海だった
沈んだかすみの向こう
海とも空ともいえぬ暗がりから
海面を這う霧
灰色の霧がこの前に迫ると
灰色の霧は競りあがり
波が破れて砕ける。
夜の海を眺めて
灰色の風に濡れ
灰色の波に撃たれている
防潮堤に砕けた波
深いうねりに呑まれてゆく波
呑まれて消えた闇の底
その波音に
えぐられたかのような自分
乱れてゆく息を吐き
後ずさりしている
それでも
ここにいようとする自分
灰色の霧の中で
灰色の霧が競りあがり
白く破れ、砕けている海。