地元で農業を営んでいる老人から、
なんども叱られている。

老人が怒っているのは、

樹林の中に蛍を自生させたいと作った、
水深15センチ程の湿地帯から

老人の敷地である斜面に、
湿地の水が湧き出ていて
草刈りをする時、

足元がぬかるんでころぶから
水を止めろと言うのである。


先日、この件について、部落の区長からも連絡があり

なんとかしなければと
湿地の水をドロドロに濁らせて、
すぐ下に湧いている水を汲み取ってみるものの、

濁り水は全く出ない??

湿地からかなり離れた斜面に数箇所、
湧き水が出ていることもあって

多分これは、山全体からくる雪解け水に違いない、
湿地の水は排水しているから、
違うと思われるのだが、それを明確に証明する事もできず

しかし、

地元の人達と少しでも争うのは良くないと考えて、
ただひたすら謝っている。

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バブル景気の中で
鉄骨造、鉄筋コンクリート造の大型建築で
働いてきた20代から30代。

竣工間近、
廊下の壁ぎわからじわ?っと水が漏れている。

上層階の浴場の防水が切れたか?
屋上からの雨水が来ているのか?
それとも何処かで発生している結露水か?

どんなに調べても解らない。

水がどこを伝って来ているのかも、突き止められない。

サッシ、型枠大工、防水、構造、コーキング、左官
最後には、水に関わる職種が罵り合う
罵り合ったところで原因は分からずじまい。

水は針の穴でも、すんなり通り抜けてくるのだ。

急結剤を使って止水処理するものの、
水は、また別の階に逃げて漏れている。
結局は、外部に水を誘導し垂れ流すしか手立てがなくなる。

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湿度8%のアリゾナ滞在から
湿度80%の日本に降り立った時、

日本の大気は水なんだと、
日本は水の国なんだとあらためて思う。

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10年前、山林を切り拓いたとき、
『お前、排水も考えないで土を切り拓けば、こんな土地、
土砂崩れとなって一発で持っていかれるぞ!
土地とは水と向き合うことなんだ!』と、一喝されたこと。

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去年、厚み8センチのコンクリートの上に
丹精込めて仕上げたセメントの床。
その床がばっくりと割れて、盛り上がって口を開いている。
床下の地中に水分が入り込み、
土ごと凍った膨張力でコンクリートを割っていた。

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2013年11月、NYの個展に添えた詩。

世の中で、もっともやわらかいものが
世の中で、もっとも固いものを
思うがままに突き動かす。
それが水であり、空気である。

“ 壁は水の抜け殻 ”
私は土を扱っているけれど
ここにある表情はすべて、水の痕跡なのだ。
自然の痕跡は美しい。
移りゆく自然は、私たちの想像をはるかに超えている。

・・・ここにさらに付け加えるなら・・・

水はこの両腕の中にあって
私の自由になり、
この身の丈を越えたとき、水は計りし得ない謎になる。

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いつも弟子にいっているのは
左官は土を塗っているのではなく、水を塗っているんだ。

壁の小さなサンプル制作は、
タイミングよく出来上がっても
いざ現場に入れば、

そこに必ず水に関わる魔物に惑わされる。

水は命を生み出し、
その命を支配している大自然なのだ。

福島第一原発の事故以来、
昨日も、使うはずのないポンプが動いて
数百ベクレル高濃度汚染水を間違って移送したとか
タンクの連結部が破損したとか、
ボルトで締めてあるパッキンから漏れていたとか
汚染水処理の人為的なミスのニュースを何度聞いたかわからない。

水を相手にボルト締めのパッキンなど、意味がないのだ
髪の毛一本の隙間から、自分たちが眠っている間も
絶えず流れて巨大になっている水。

事故から3年
放射線は今も拡散しているとすれば
拡散した地域の水溜りは、まさしく放射線の溜まり場となり
福島の林道の水たまりに、鳥肌が立ってしまった俺。

除染作業を進めているといっても
放射線の一粒まで処理できるはずはなく

大雪の後の青空や、
長雨の後の青空があんなに鮮明なのは
空気中のチリが、全て地表に運ばれたからで

今も降り注いでいる放射線は
3年分の山々の膨大な枯葉の表面や、腐葉土の隙間に埋没していて

放射線の粒は
水に気まぐれに運ばれて、低いところで集積する。

案の定、

つい先日、ため池の放射線量が
どこも高くなっているというニュースに、
そりゃあ、あんた、当たり前でしょ!

この場所、
除染しましたなんて言っても、大雨が訪れれば、振り出し。

放射線は神出鬼没、
消えては現れ、現れては消える
空気と水によって自由自在に移動している、
そう考えて自然である。

【・・・要するに、お手上げなのだ・・・】

人為的なミスが繰り返されるのは、
意識や、やる気や、技能の問題ではなく、
その大元に体験と身体が、本能的に

お手上げ状態であることを、感じているからに違いない。

もし列島の南の何処かで
原発事故が起きたなら、台風の度に全土が震えあがり
本当のパニックが起きるに違いない。

偶然にも昨日、
汚染水が今も溜まる福島に【震度4】という地震速報が流れる

田村市  南相馬市  楢葉町  富岡町  浪江町。

国連の気候変動に関するコメントからも
異常気象は深刻になることが予測できる。

愛なんて言葉、使ったことないが、
原発はこの言葉を問われている

国防っていうけれど、本当の国防が問われている。

・・・・法より重い掟がある・・・・

国破れても山河あり、
これこそがトップが下す、最後の愛

それでも再稼働に舵をきろうとしているこの国。