19日にニューヨーク入りして2週間が過ぎた。

ホテルにチェックインしてすぐ数時間、 そして翌日は、
       輸送した材料や荷物の整理をしながらの確認事項で終わる。


翌日からは、

チェルシーのギャラリーがどんなところか行ってみる
     展示する壁〈作品〉は、無事着いているだろうか?
             という不安からマンハッタンの届け先へいき

作品の一部を受け取って、ホテルへ移動させる。
翌日、作品展示の方法で食い違いが分かり、足りないものの買い物へ。

間近に迫っている、ジャパンソサエティーでの打ち合わせ。
ところでジャパンソサエティーってどこ?

そんなはじまりであった。

22日 ジャパンソサエティーの講演は、
隈研吾さんのチカラ添えで、いきなりの緊張感、満席。

23日 早朝7:00より一日中、NY、ブルックリンなど土探し、?TV撮影あり

24日 ピグミメント会社での、ワークショップ
18:00?21:00まで(搬入が大変)

25日 その撤収、片付け荷物の移動が、いちいち大変。

26日 展示の仕方について多少問題が起きて、マンハッタンへ

27日 休みながら、日本の仕事をする
28日 休みながら、一枚、壁を作り始める

29日 明日の講演会場の下見と機材チェック、あと買物
30日 ラガーデイア大学で講演1:00?4:00まで

31日  セントラルパークと、マンハッタンをはじめてぶらぶら歩く
    タイムズスクエアの道路工事中の砂を採取(簡単ではない)
    NY在住のARTをビジネスにしているはじめてあった
ダンディな日本人に案内されMOMA美術館へ。

01日 ブルックリン在住の、イタリア人マイスターの工房へ

02日、03日は一日中、ホテルの部屋で壁を塗り、NYの砂で完成

03日 再びマイスターの工房に終日。

3度行った講演は、どれもとても好評なのだが
       事柄が終われば、すぐにホテルに戻って寝てばかりいる俺。

地下鉄の階段を登るだけで息切れがしたり、
     マンハッタンを歩くと、ふっと一秒、気が遠くなって
                       軽いめまいがしたり

電車を待っているだけで、かがみこんでしまう。

ここに来る までの日本のハードスケジュールに、
身体も精神も疲れていたが、疲れを通り越して
疲れきっていたと実感した、この2週間。

キューピーコーワゴールドを一日二錠、
           NYの宿泊ホテルは、まるで病院がわり

                入院しているような毎日を送っていた。

強烈な時差ぼけが、簡単に抜けず、
   眠るって、こんなに大変で難しいものかと、眠りたいのに眠れない。

思い切ったのはいいけれど
    なにひとつ調べず、ここが世界の核だからと、
              ただ思い込み、来てしまったニューヨーク。

前の車が、少し一旦停止するだけで、
      間髪いれず、せき立てるクラクションが四方八方に響いている

横断歩道を渡りながら邪魔だとばかり、車のボンネットを叩く黒人女性。

狭い路上、
停車中のタクシーから、人が降りているのに、
怒鳴りながら、すり抜けようとねじれ込む女性ドライバー

大声で叫んでいる人に振り向くと、どれもただの独り言、
そんな奴がどこへ行ってもいる、
電車の中にまでいる。

どんなに手を上げても休憩時間だと、いっこうに止まらないタクシー。

室内、店内はすべて禁煙。
ホテルの外でタバコを吸っていると
通りすがりの白人が近寄ってきて、
タバコを一本くれないかと、分厚い手を広げて迫ってくる

また違う奴が来たかと思えば 、
今度はマリファナいらないかと話しかけてきた

マンハッタンを歩けば、
   パトカーのサイレンと世界中の人種、国籍とすれ違う。

とにかく街中がうるさくて、
携帯電話の音量を最大にしているのに相手の声が聞こえないのだ

・・・・・・これが当たり前の日常風景である・・・・・

NYは、例年よりも暖かい日が続いているようだ。

体調もようやく良くなって
昨日は深く眠り、朝7:30、
外は急にグッと冷え込んで、肌寒い風が吹いていた。

誰もいない道をゆく
ずーっと先まで、まるでゴミの吹き溜まり。

しばらく、ひとり歩いた
歩きながら・・・思う。

講演はどれも、とても喜ばれていて
質問も山ほどくるから、時間が足りなくなるくらい、早く熱い反応。

けれど、なんだろう?なにか違う・・・・・ような?
日が経つに連れて、腑に落ちない自分を感じている

冷たい風が心地よく、ほろ悲しく
なんとなく肌で、直感してくるものがあった。

       ・・・・その違いは、たぶん[ 深度 ]というようなもの。

以前二度、フランスに行った感触と、違うのだ
あの感触を思い起こしながら、今と比較している。

フランスで、うなづいていた人と、
NYで、うなづいている人が違う

・・・・なにか深さが違う・・・確かに違う。
冷たい風の中で思うことは、いつも正しい。

そう直感したあと、
このままではダメだと焦る気持ちが、いま膨らみ出している。

この混沌としたカオスのなかで、
     場末からてっぺんまで、天国と地獄が目の前でごちゃまぜに
               散らばっているのがニューヨークなんだ。

俺は、自分を試せる人物がいるだろう
           求める ニューヨークにまだ会っていないのだ。

・・・まだ、会えていない・・・

どうしたらいいのだろう、
どこに行って誰に会えばいいのだろうか?

ジャパンソサエティーの講演のあと、こんな会話を聞いた。

ここは、チャンスが誰にもある街。それは確かだけど
    同時に、立ち上がれないほどの、落印を押される街でもある。

今の俺は、落印を押される所にさえ、行けていないのだ
あきらかな準備不足とも言える。

チェルシーの個展まで、あと一週間。

きっとうけると思うよっ!・・
なんていう人が日本に、たくさんいたけれど
なんの、そんな話は、
如何にニューヨークというイメージだけの話であったことか?

いくらチェルシーって言っても、そんなの誰も知らない。
そう直感する、ただ埋れてしまう。

この分厚いカオスの皮の内側へ、
どうやって入って行ったらいいのだろうか?

嘘でもこれが私のアートだと、
         いっぱいの主張をしていかなければならないのに。

日本でよく聞かれる質問、職人とアーティストの違いはなんですか?

ここは、そんなのドーデモイイ、
ピンからキリまで、全員アーティストなのだ

けれど

・・・・・・カオスの外では、落印も押されない・・・・・

・・・・どうしたらいいか?
       ・・・・どこに誰がいるのか?

わからないでいる・・・・。

【ひとつだけいいこと】

ジャパンソサエティーに福岡伸一先生が来てくれていて
とても興味深く良かったよと、声をかけてもらったこと。

もう一度、会いましょうと、機会が出来たこと。