上着の襟をたてて激しく
お前は穏やかさに耳をふさいで、
          もう、壊れていると諦めてきた。

ひとりの夜に、ひとりに包まれ
小さなスタンドひとつの暗い部屋。

白と黒のモノトーンの視界で
人と自分が、どれだけ削ぎあい落としあったか?
それを、かき集めてきたこの手と傷に、
      生きのびてきた愚かさを見ずにはいられない。


いま、冬晴れの地平を前に
       雪の輝きと、薄れる雲の儚さに
              引き戻されて、とらわれて

凝り固まったこころを
       緩めることもできないままにいる。

この雪面と冬枯れの山々は
       結晶のひかり、きらめいて
               白い反射、青い影。

今、ここに、同じにさみしい人が
             同じにさみしく立ち

獣さまようその跡を、見つめて見失ってくれるなら

どんなに、この冬が美しいだろうか?
どんなに、この冬が繋ぎとめてくれるだろうか?

この広い雪面の下にある
       地表の あたたかさを心の内に握ってみる

視線をおぼろに立ち尽くし
       それでも景色をあたらしく

吹きつける風は勇気の音
       背後に舞うのは覚悟の風。

風はどこか遠くから
     だれかの足音を伝え、この身体を打つ

悲しんでいるようで
      泣いているようで
           そして、笑っているようで。

やがてこの長い影を、空の影がのみこむと
まぼろし、お前は消えていて・・・・・

             横殴りの雪は頬を伝ってしたたる。