1999,1,24,記

知らない街で・・・・
知らないホテルのシングルルームにチェックインした後、
日も落ちて何も持たず、ジャケットのポケットに手を突っ込みただ一人歩いていると
あらゆる物が溢れていて、ざわめいていて・・・・・・・・・目まぐるしく動いている。


通り過ぎる電車や車のクラクションとか、そして人々の話し声が混ざり合って1つの響きになり、並び立つ建物に反射されてどんな隙間にも浸透し尽くして尚、逃げ場を失っているみたいだ。

そんな雑踏の中にこれといったあても無く一人埋もれていると、そういった音が、音を超えていて、何か混沌とした・・それでいて空虚というか、何者も無いような、何かが尽きていく様な、そんなイメージを受けてしまう。

そのうちに段々、その慌しい波長に知らず知らずに慣れていく自分と、そのまま何も変わらない自分がいて、取り残されていく様な・・・・・そんな感覚になる。

・・・・ひとり ポツン と静の中に自分だけがいるような錯覚に囚われ始めて、凄く寂しい気分になってしまう。

今此処で見ている物や、人の流れが風をつくってるみたいで・・・・・皆同じ速さで進み、同じリズムで呼吸をしていて・・・・・・・淡々としている。

ある意味それは形であり、全体が保護色に染まっていて、1つの色になっているのだろう・・・・・・・・・・。

すれちがう人の表情は皆、凍っていて視点が据わっている様に思え、
バス停に立っている女性は、まるでマネキンみたいに路面のアスファルトを見つめている。

もしかしたらこれが今の人達の本当の素顔なのかもしれない
・・・・というような気がしてきた。

でもそれがいいとか悪いとかでは無く、結局自分は一人なんだということを皆感じていて、行き着く所が解らなくて、不安に怯えている顔であったり、その逆に、色んな矛盾や人との係わり合いにうんざりしていて、取り繕う事無く覚めた顔でいられる事が意外に楽なのかもしれない。

余りに妥協に満ちているこの社会に、たった一人飛び出す勇気は無く、心の奥にある本当の気持ちを聞いてくれる人もいなければ、伝える事も出来ない・・・。

弱さを出したいんだけれど、はけ口が見付からない、叫ぶ場所が無いのだ。
いざとなると、さらけ出す事も、裸になることも怖くて仕方ない。
・・・・・皆同じだ。・・・・・・・でも、・・・・とはっきりしない。

ホテルに戻ったシングルの部屋は、小さくて、しんみりしていて、
一人でいる事が凄く気楽で切ない。
今日、自分とすれ違った人は私の顔を見てどう感じただろうか?
・・・・・・・なんて考える。

聞かなくても解る・・・・・。

きっと自分も同じ顔をしていたに違いない。