青への憧れがある。

青く薄暗い静寂は
この熱を入れ替えて
自分を新しく変わらせるのではないか、

青い冷たさに立ち
自分の熱を奪れてしまえば
青と同じになれるのではないか。

そんな想いを、もう18年抱いてきた。


月の光にも、
雪の影にも、
雨に
闇に
氷に
白に
黒に

微かな青を見てきた。

時には
音の中にも流れる青を見てきた。

けれどいつも青は
どんなに海の水をすくっても
どんなに空が青くても
虚しく薄く巨大で近づけず
青はいつも新鮮で遠いのだ。

それでも青へ
青を帯びた身体へ
青い眼へ
青への憧れがある。

ところが最近
自分が赤を多用しているのがわかる。
その赤は朱色から焦げ茶の間にあって真っ赤ではない、

つい最近、
幅12メートルに及ぶ、赤土の塀を造っていた。

その塀は、
目的なくただ時間に任せて造り
やがて背丈より高く積層して完成したのだが

数日前、
その赤い土塀に、夕陽が水平に照らしている光景が
光を何処までも深く吸い込んでいるように輝き

そのうちに

それがなにか別の世界への入り口のように思えて
その時想像の中で、土塀が更に組み立てられてゆくのを見た。

幅12メートルに、瓦が敷き詰められ
その中心に末広がりの入母屋が
三角に迫り出して
塀の両端に袖壁の塀が組み立てられ

地面に敷石が敷かれた舞台を見たのだ。

その敷石と敷石の間には

赤いレンガが
阿弥陀模様に挟み込まれ
その舞台の先端に赤レンガの花壇があり、

小金の麦が横一列に実り
この麦に並列して、真っ赤な彼岸花がびっしり咲き誇っている。

そんな土塀と
阿弥陀の赤レンガと彼岸花の舞台は
夜の闇に、ぼんやり灯され、人が立つことがないのである。

青く薄暗い静寂と
冷たさに覆われている舞台を想像の中に見たのだ。

ふっと、こう思った
この赤い舞台は青への入り口ではないか?

樹林を背にした舞台は
死と熱、自然と欲、永遠と夢を
青と赤を対比した結界の舞台なのではないか?

あの想像の中に見た舞台を
再現させたいと思っている。

18年かけて見つけた、青への入り口・・・・・

・・・赤い舞台。