白から銀へ、白銀へ
銀は黒へ、銀黒へ。

バスの重いタイヤが
微かな光を巻き上げて氷点下を走り抜ける・・・
そんな灰色の風景を旅したことを思い出す。

銀黒から灰へ、灰青へ。
吹き抜けてゆく微かな光


乗り込んだバスの薄ら青い灰色の窓には
霞んだ稜線と針葉樹林が
寡黙な現象として流れていた。

薄ら青い灰色の窓を
生でも死でもないどこかへ
バスが吸い込まれていくかのように眺めていた。

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2日前の朝

粉雪に覆われた外は
厳しい真冬の世界に様変わりしていた。

きしみあう氷点下の粉雪に立ち合うとき
あの時と同じ匂いが蘇る。

光と風と雪は
溶け合うことなく絡み合い
あの時と同じ、乾いた音が聴こえてくる。

粉雪は
ガラスの粉のように
踏みしめた靴跡が、その場で崩れ霞んでゆく
春夏秋冬と違う、空白の領域を感じるとき

あの、どこまでも続いた
灰色の光の
氷点下のバスの余韻が
今も途切れず
自分に続いていることに気づかされる。

白から銀へ、白銀へ
銀は黒へ、銀黒へ、
銀黒から灰へ、灰青へ。

その光景は、
生でも死でもない季節のイメージを描かせて描けず
ただ薄ら青さに引きこまれて立ち尽くす。

その描けないイメージが年々深くなっているのは
巻き上げる灰色の光が命から離れたものに見えるのは

来る春を
心待ちにするようになっているからだろうか

春が来るごとに
切ないほど美しく感じるようになっているからだろうか。