遠くて遠くて、
たどり着くことなんてないだろうと、

進んできた夢。

俺たちの夢は、11年も経っているというのに、
まだまだ遠い道のりの途中・・・・・


けれど近頃、
いつかもてなしをしている、浮き立った気持ち・・・

館の夢が少しだけ、
ふっと目の前の風景の中に・・・
    ほんのかすかに、

      幻のように見えては消える。

その夢の中を、夢みてみる・・・・

もてなしの一夜は、まず暗い坂道を進んだ先の、
大きな石の受付から始まる。

ここは、

限られた招待状を持った人達のみが集まる、ユナイテッドキングダム。

石の受付には、ろうそくがふたつ・・・

二人の受付の係りが、
   いかにも不慣れで不器用に、小さくお辞儀をして、
            
         招待状と引き換えに、
              真鍮で作った記念の鍵を手渡している。

右斜め後ろの、石の囲炉裏では、

真っ赤に燃える丸太の弾ける音、
パチパチと舞い上がる火の粉が、夜空にすいこまれて消え・・・・

その横に、
6畳くらいの小さなかまど小屋があって、

三連の口を開けた深草色のかまどを、
     たき火の明かりと【赤土の磨き壁】が、
                つやつやと取り囲んでいる。

今夜は、
  もてなしの館が選んだ人たちの特別な集い。

・・・・もちろん予約なんてない・・・・

・・・・友達の友達って言うのは、お断り・・・・

ライトアップされた樹林は、青い夜に浮き立って
                  若葉のように鮮やか。

大きなアプローチのその先にある、
窓明かりに向かってゲストたちが集まってくる。

館は一見、 

     ・・・洋風?・・・

なのに入り口には、
  不思議な模様の提灯が、ぼんやりともる和洋折衷で

キングダムの王でもある主人は
琥珀色のシャンデリアの玄関で、やや緊張気味に出迎えて、
                          

本日はようこそ、オイデシマシタ。と
           すこし言葉、もつれながら

おしゃべりは短めに、けれど濃密に・・・

            ひとりひとりを広間に招く。

広間は、間接の電球色でやわらかくて

朱の縁取りの、漆塗りの建て付けの、
    アプローチの樹林を望む両開きの窓は、
                風の流れる絵画のよう・・・

縦長のテーブルに向かい合って腰かけた八人は、
                  みな個性豊かである。

着物を着た女性、
ドレスを着飾った女、
紋付き袴の男性、
アスコットタイの男、

そこに、

なんでもない、普通の、すっとぼけた、人のいい男もいる。

              ・・・さまざまであるほどうれしい。

顔見知りも、
初めて顔を合わせた者も

雑談の内に、話題を見つけては、自然な会話を繰り広げている。

主人は短めの襟をたてて、

胸の内ポケットにピンマイクの
トランシーバーを付けたラフなジャケット姿で

テーブルに着いたゲスト達へ、
  お好みに合わせて自由にグラスをどうぞと、
      簡単なあいさつをして・・・・あとはその場任せ。

シャンパン、自家製葡萄酒、日本酒、ワイン・・・
                  上等なブランデイだってある。

ゲストのひとりが、気の利いた招待への感謝を返してくれる、
    するとひとりが、立ち上がって詩の朗読をはじめたりする・・・・

主人はゲスト達の自由な話題に驚かされたり、
                 もっぱら聞き役に徹している。

そして笑みを浮かべながら

さりげなくその胸元にささやく、【 もてなし (6) 】
             もてなしは言わない、ただ(6)と、短く。

すると、ライトアップしていたライトの位置が変わり、
       樹林全体が、まったく違う風景にさまがわりする

・・・(9 )は、いま畑から、掘り出してきた前菜をどうぞ

・・・(11)は、メインデイッシュの用意を合図する。

例えば【 もてなし (21) 】と、伝達すると・・・

広間から見える向こうの正面
     かまど小屋の前で数人の子供達が花火を始めだす

    懐かしいような火薬の匂が、風にうっすらと広間に運ばれる。

そのうちに、教員もどきのような指揮者と数人の楽団、チェリストも現れて、

弦楽セレナーデ、
   ユーモレスク、
      浜辺の歌の演奏をはじめるのだが、

それが、ときどきリズムが狂ったり、
        途中で止まって、またやり直したり。

                   少し笑い声が聞こえてくる。

もてなしの仲間達が、向こうの石の囲炉裏で火を囲んで、
                    一杯やっているのだ。

唇をへの字に曲げたり、
片目をつむって、こめかみを釣り上げているゲストや
           咳払いをしてニヤけているゲストに

主人はさりげなく、これ、つい最近、見つけたものですがと、
             
               掘り出し物の骨董を一品、出したりする。

それから・・・それから・・・・

     それから・・・・それから・・・・

・・・2日前、やっと出来あがった石積みの星見広場は、

もてなし番号(?)
   その為には、春夏秋冬の星座の勉強を始めよう。

もてなし番号(?)
3年前に敷地だけは用意した、風の茶室は、
     今設計ができたところで、オリジナルな網戸を考案中・・・・

                  名前は【涼庵】にするつもりでいる。

これから、塗り壁仕上げをはじめる、仁王門は斬新に、

仁王門からつづく土蔵は、さてこれからどう考えてみようか?

そんな夢の中まで、まだ夢の途中・・・

遠くて遠くて、たどり着くことはないだろうと、
               進んできた俺達の夢は、

作ったりやり直したりを、繰り返して
             来年12年目の春を迎える、

そして、確実にひとつひとつを積み重ねて
           ふっと俺たちに、その未来を見せるのだ。

   
 ・・・・・最後に、以下、その精神を、ここに添付する・・・・・

2010.11.19ブログより≪シャクン≫添付