3月中旬、
ようやく雪が溶けて、春の気配を実感したのも束の間。
22日、23日と、再び強い寒波に降り出した雪。

積雪20センチを越えた飛騨は、
また氷点下の、白銀の世界に引き戻されてしまった。


朝、目覚めてまず、眺める窓。

舞い落ちて休まない雪に
灰色が埋め尽くした無情な空に
またうなだれる。

もう耐えられないと、憂鬱な気持ちに沈んでゆく。

正直、息が詰まった。
これまで、こんなに重苦しく感じたことはない冬。

人生は様々。

いろんな壁や波があることは分かる
自分よりもっと重圧感に、生きている人が、ごまんといることも分かるが

人間は黙っていなければならない時がある
飲み込めない事を、飲み込まなければならない事がある。

いつかは、
向き合わなければならない事。

譲れないもの、守らなければならないものがある。

この1年、この2年というものは
   仕事以外のことにも、限界まで張りつめ
           例年以上の仕事量をこなしてきた。

ことに、この冬。
休んでいても休息にはならず、
今年の雪は、いっそう自分を重々しく過敏にさせた。

気持ちのひび割れを察知して過敏
崩れまいと繕おうとして過敏
張り詰めてゆく過敏を、逃がそうとして過敏。

そうして

24日、雪が溶けだした。
26日、雪は消え

27日、地表が乾いていた。

雲のない空。
全身に光
色濃い影を踏んでいた午前9:00

まぶしさに・・・・目を細めて空を仰ぐと

こんなに清々しいと思ったことがないほどに
今ここを
唯一の居場所だと実感して
まぶしさが、新鮮で新しい世界に思えた。

今年、はじめての黄花が
水の流れに咲いているのを見つけて

これから蝶が舞い
新緑を迎える
これまでの春とは、まったく違う春がくる。

そしてその頃、ある人物と話をさせて貰うことになった。

その人は、
自分の内面に向き合って、掘り下げ
掘り下げられなければ、自分を喰いちぎってでも
奥底にある、無意識の芯の中に入り込んで
自分に宿る芯の裸の姿を、追い続けているような

意識の前の、命そのものだけを
            感じようとしているような

たぶん、装った飾りには、まったく見向かない
繕っている場所を、簡単に見破るだろう人物で少し怖いが。

自分が目をそらしてきた矛盾と、ひとつ離れた今

話は、
自分が何処まで裸になれるかに関わり

もしそれができれば
それから後の今を、
もっと人との触れ合いのなかに、
新しくできるかもしれないと思っている。

そんな予感に
あんなに小さな黄花が光線を跳ね返して輝いた
眩しい黄花を焼きつけて東京へ向う。

この1年あまり、なにを書いても
重苦しいものに
つきまとわれたような文章になってしまったが、

こうして書くことができなかったとしたら、
飲み込めないものを飲み込むことに、耐えられなかっただろう。

ようやく抜け出すことが、できそうな気がした日。

3月27日の、この光を忘れることはない。