右眼をしきりにかいていた。

誰も気づかない薄さで
自分だけが分かる硬さで腫れあがる


いつの日からか気づいていた
右眼の奥にある硬い蕾

鏡と向き合う、右の目つき。

腫れるまぶたの眼球の圧迫に

鏡には、
膨らみ出した蕾が
全身の神経を
敏感な根に変えて結びつき 

嫌悪な目つきで予感を写し
蕾を開こうとする右眼。

このまま、もし
蕾の眼が開いてしまったなら

たぶん
この眼に覆われてしまうだろう予感に

早く意識をちりじりに散らし
すぐ離れなければ壊れてしまう

まだ逃げられるうちに。

右のまぶたを鎮め
この発熱を覆うところを
もう一方の眼が
むさぼるように探す

たとえば、
この体温と同じ水の底に沈んでいるか

すぐ耳元で
今を昨日のように話す声を聞いて
すがっているか

それとも
この右眼を見つめ返し
右眼を従えて何かを憎むか。

そして震える。

ただ今を
過ぎて欲しいと、うろたえて

腫れるまぶたと、むさぼる眼。