雨の日暮れ
濡れた瓦をながめている

やみそうもなく
激しくもならず
つまらぬ雨が降っている


しっとり降る雨と錆び土の壁

品のいい肴で手酌する

ひとくち含み
薄紙のように
なに食わぬ顔で喉に通す

鼻に香り抜けて
目をとじて

・・・うつむく

また
ひと口ふくんで・・・

くだらんと飲みこむ

場違いだと天井のさおにつぶやき
ねじれた真空を浮かべ
すてるように、まずく呑む

窓をあける

しばらく雨と呑んでみる

雨向こうの格子灯りに
ぼんやり虚ろにとらわれ

つまらんとさめて片肘で口に運ぶ

濡れた瓦は暗がりに消え
もう一本飲んでやろうと思う

うっすら流れる弧が筋を引いて
目の前に
掛け軸ゆれた、深い錆び壁の淡い傷

ふし目がちに
このおもしろくもない傷を
愚かな傷を自分にしてまた呑む

・・・黙って

・・・雨やまず

黒い縁取り、銀のふすま
銀を背に朱と黒
黒に一筋の茶。