真夏、七月の草いきれ
玉のような汗をかいている

しめきった部屋で、通じ合わぬ言葉を
             埋め合っていた日々。


いま、深い山あいの谷間で
     強い陽射しの草むらの
         熱気の淀みの中にいる

腕にうっすらと血のにじんだ切り傷と
腫れあがった湿疹に爪を立てて

廃熱のような息を吐き

ねっとりとした汗に
まとわりつく虫を払いながら

首筋の、
冷めたい皮膚に手をあてて
         
空を見上げた・・・・

粘ついた皮膚で空を見た・・・
空は、高く高く遠ざかって流れていた

空は、ただ流れていたのに、

私は、空を忘れていた

白雲をかすませて吸い込んでしまう青空

あの空は昨日も流れていたのだ。

夜明けの無垢な空を眺めていること
茜の空に濁った私を重ねていること
水平線に溶けて沈む夕日に染まっていること

我を忘れて空にとらわれ

ただ、流れていた時間
・・・・その時間のぶんだけ

わたしは私の命を休め、永らえる。