真冬の不思議な星の夜は
      空気が雪になるのでしょうか?

窓の灯りが寝しづまり、
      深いひさしも黒ぐろ沈むと

物音は、この足もとに吸いこまれ

吐きだす息も、
   うすく広がり消えてしまいます。


手を空にのばした、
    もうすこし高いところ

         その澄んだ暗がりから、

ほらそこに、
    
ふあっと滲んで現れて、
      かすんだ雪が、
         
         目の前をすぎているのです。

草や土や、割れた氷
   このおぼろな影もゆっくり包まれ

ふあっと不思議に、

静かに哀しく、か細くなって
    絡みついたり、粉々散って舞いおちて

この空の・・・

腕を広げたいっぱいの

それ以上の、すべてのかぎりの。

降る雪は、遥か遠くのかなたまで、
      小さく小さくきざんで響き

ピアノの音色のように、
       身体でうけて見るのです。

春にしみだす、エメラルドの水だと想うのです。

儀式のような時は流れて

冷えきった指さきが痛みだし

ぬれた毛先が凍てつきはじめると

靴跡は降る雪に消えかけ
    電線の、苦しげな唸りが聞こえていました。

まばらな町の、

明かりの中にたぶんある、
       そのやすらぎを眺めたあと

私は、わたしの中の怒りと望み、
          執着とあきらめが交錯し

目の前には、
    幼いころの自分が私を見ていて

私のすぐ後ろには
    自分模様の気配が、腫れあがっているのです。

星のかがやく雪の夜は、
        つかめぬ運命を引きよせて

月のナイフは冴えきって
        ツバキの葉は、ただ艶やか。