職人社秀平組、社訓。

一致結束
一喜一憂
一攫千金
一網打尽
言語道断
横断歩道

断崖絶壁
頑張リマセウ
   一歩進ンデ、二歩下ガル。


もう俺たちは、人を憎んだり、
        争ったりしなくていいんだ。

これから、どこまでゆけるか、
        どこで終りになるのか?

俺たちに何ができるか、
        冬を越す蜂のようになって進むんだ。

水を汲みとる方法も、火を起こすやり方も、

たとえば人が、この時期の種まきでは
        良い収穫は出来ないって、忠告を受けても、

話を笑って聞いて、そのまま笑って続けている・・・・

11月の、霜の降りた朝、
樹林の中は、ゆらゆら、ゆらゆら木の葉が落ちる。

掃いても、掃いても、
        ゆらゆら、ゆらゆら落ちてくる。

俺たちは、
目の前のことに、いつも夢中になっているけれど、
         でも、ほんとうの先は、遠い遠い、遠いその果て・・・・

・・・・・・・・・・・・・。

≪ 樹木ノ倫理 ≫

冬ノ裸ノ樹木タチノ。
裸ハ真実美シイ。
小サイ庭ノ大キナ樹。
槐(エンジュ)ヤ欅(ケヤキ)ヤメタセコイヤ。
陣陣ノ寒気ノナカデ。
風吹ケバ風ノ気儘(キママ)ナリニ枝枝ハ揺レ。
雪降レバ雪ノ思フママニ雪ヲ積モラセ。
夫夫ノ樹木ハ夫夫ノ個性ニ従ヒ。
夫夫ガ夫夫独リ燃エル。
強イマツタウナ樹木ノ倫理ダ。
例ヘバ自分ノ。ソシテ。
人間ノ倫理ナド当テニナラナイ。
人間ノ倫理ノ在リ方ナラ動物タチニ聞クガイイ。
動物タチハ答ヘルダラウ。

人間ハオレタチトオンナジデ
ソノウエ殺シ屋ノ臭ヒモスル臭イ臭イ動物ダト。

槐ヨ。
欅ヨ。
メタセコイヤヨ。
改メテ今。
オレハ君タチヲ仰ギ見ル。

                     ( 草野心平 )