残雪と木漏れ日・・・・
泥まじりのざらめに消えかかった足跡。

まだ芽吹かぬカラ松の、林の中にひとり、
あおられて揺れる樹々と空を、重ねて見上げている。


ただ黙って立つ、ひとりの時間・・・・・・
真っ白自分。カラッポの心と陽の光り
ぬかるんだ地面、折れて尚立つ、枯れたススキ
ただ、樹皮に手をあてては根の事を思い、
            遠い鳥と、枝先と、この皮膚は風。

やがて夕暮れ、逆光に、
まばゆい無数の斜光を受けてそのまま・・・・・
木立のざわめき。

サラサラと落ちる繊細な松葉が、
      まるで光と影に割れながら、流れて・・・
            消えてゆくように見えている・・・。

光影の移ろい、めぐる血。
何かが自分に注がれている様で、
両手で顔をつかんでこすり、
   その手を胸元に止めて開いた指に・・・
        今、此処に自分が在るという実感と、
      あと、どれだけ残っているのかと、自分に問う。

陰と陽の・・・
別々の意思を持つ片目と片目。

全てが二重にずれ出して・・・茜と紺が溶け合って・・・
風は前後に吹き変わるたび
       ちぎれて体が歩き出す。

西方、杉の一列が、真黒にとがって空を指し、
               夜陰の影に染まる時。

バラバラ体が集まって
      ひとつに冷えて、立ち返る。

また明日も、激しく、強く、悲しんで笑う・・・

握るハンドル・・・・ズブ濡れの靴。