夜道を歩いている
月の雲間。群雲の流れ・・・・。
しんと冷えた静けさにひとり
果てしなく、黒に近づく紺の果てを見つめ
ただ、透けてゆくのを待っている
限りなく遠く澄みきった光と影に・・・。
心の底の、ガラスケースの一筋の
ひび割れの・・・・・・欠片のひかり
私は全てを打ち消して
黙して歩く、草の道


月夜。
月夜の道を歩く山沿いに続く小さな農道、楢の林
冬枯れの山が蒼に映した悲しみ。
木々の枝が落とす影と自分の影
月のしずくを受けて貫いて、刃物の心を宿してく。
蒼く落ち葉を踏みしめて
この身も削り、捨ててゆく
足元に伸びる蒼い血の道
静脈の道

闇夜。
暗闇の中を歩く
闇にまぎれて滲んで歩く
漆黒の瞳、白いまばたき
存在の不思議、不死の魂。
まことの言葉は失われ・・・
さまよう心、確かなものは、何もない
音の無い谷、ひとひらの葉を揺らす風
踏みしめられた砂利の音。
魂だけを浮かべた、
忍び音の道

ひとりの夜。
伐採の山、裂けた岩
赤い谷の鉄の水
氷雪を濡らす春の雨
錆びた屋根を叩く雨音の中でひとり
真の言葉はここになく、雲はちぎれて空を飛ぶ
変わることのない私と、変わりゆく私の狭間で
遠く移りゆく紺の闇
全てを包む紺の道。